慢性炎症を抑えるオメガ3
世界中で、マルチビタミンミネラルに次いでのまれている人気のベースサプリがオメガ3! その資質※については明々白々で(薬剤にもなっています)、今さら…ですが、いくつか大事な点はおさえておきましょう。
※資質…挙げればきりがないですが、いちばん大事な資質は“慢性炎症を抑える”の一言に集約されるかと思います。老化は、病気、認知症、寝たきりの最大のリスクファクター、そしてその老化の正体は慢性炎症…、つまり慢性炎症を抑えることは老化を抑えることになります。
私も自分の同級生たちにオメガ3を薦めていますが、認知症の予防になるかどうかはまだ分からないですが…時期尚早(笑)、少なくとも高血圧症や脂質異常症などの数値改善には効果がありそうです。
Mayo Clin Proc 2017;92:15-29
Am J Clin Nutr 2016;103:330-40
では・・・
オメガ3なら何でもいいのか?
あるいはできるだけ多く摂ればいいのか?
ご存じのようにeクリニックはクリルオイル由来のオメガ3を推奨していますが、その理由、理解していますか?
そのまえにクリルオイルのデメリットを最初に書いておきますが…、クリルオイルは、魚油(ほとんどの市販のオメガ3サプリの資材)に比べると少しコストは高くつきます。
でも、コストがかかっても、あえてクリルオイルを薦める理由は?
クリルオイルを薦める理由
1番大きな理由は…
クリルオイルはオキアミ(プランクトン)由来のオイルです。オキアミはほとんどが南極海に棲息し、かつ、食物連鎖も下位にいます。つまりこの2点から、海洋汚染(多くはメチル水銀汚染)の心配がほぼゼロと考えていい資材となります。
いっぽうの魚油は、(どの製造元もそれなり配慮していると思いますが)、大型漁※も資材源の対象魚となるので、メチル水銀汚染に対する懸念が全く払しょくされるわけではありません。
※大型漁;マグロ類などで、厚生労働省は妊婦さん対象に大型漁の摂取制限勧告をしています。
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin
次からは羅列になりますが…
オキアミは、ほぼ無尽蔵、枯渇する恐れはありません…枯渇すれば海から魚がいなくなる(笑)
SDGsにもかなっていますね。いっぽうお魚は取りあいになっていますね。
…ちなみに、体重100kgのマグロが生きていくためには1tのイワシが、1tのイワシが生きていくためには10tの動物プランクトンが必要となります。(By日本海事広報協会)
クリルオイルのオメガ3(EPAやDHA)にはリン脂質が結合していますので※、体内への吸収、細胞内への取り込み、いずれも効率が高く、体内利用率が高いことがわかっています。
※リン脂質が結合;クリルオイルはリン脂質型のEPA/DHAで脂質にも水にも溶けやすい、いっぽうの魚油はトリグリセライド型のEPA/DHAで脂質には溶けるが水には溶けにくい性質がある。リン脂質とトリグリセリドの構造の主な違いは、リン脂質分子がグリセロール骨格に2つの脂肪酸とリン酸基が結合したものであるのに対し、トリグリセリドは3つの脂肪酸基で構成されていることです。
オメガ3は非常に酸化されやすく、製造過程や販売過程で酸化してしまうこともありますが、クリルオイルは抗酸化作用のあるアスタキサンチンを含んでいますので、酸化される心配がありません。つまり製品の品質と安定性保持が担保されます。
これは、データがあるわけではなく(全くの私見ですが)、化学構造式を演繹して考える限りは、リン脂質型であれば、脳内移行もよりスムーズだと想定されます。というのも、私自身がオメガ3を推奨する1つの大きな理由が、認知症を予防できる可能性があると考えるから、やはり魚油ではなくてクリルオイルなのです。
クリルオイルに関しては、今世紀になってようやく注目され始めたところで(下図はPubMedの発表論文の推移…ぜひ『krill oil』で検索してみてください)、まだまだ研究途上の資材かもしれませんが、少なくとも、魚油と同等かそれ以上の効果が期待できることは間違いありません。
…ちなみにクリルオイルの優位性については2014年に発表された論文(J.Lipid Nutr, Vol.23,No1(2014))が詳しくてわかりやすいです。
また、クリルオイルに関する他の論文は、南極クリルオイルの供給会社大手のWEBサイトにも、代表的なものが記載されていますので、ぜひ参考にしてみてください。
https://www.akerbiomarine.com/ja-jp/evidence
蛇足になるかもしれませんが…
昨年の学術雑誌「薬理と治療 (2023; 51(7): 1013-1029))に、興味深い論文が掲載されていました…クリルオイルを摂取すると日本人の肌バリアの機能(保湿機能など)が向上するというもので、朗報の1つかもしれませんね(要約は下記)。
https://www.pieronline.jp/content/article/0386-3603/51070/1013
オメガ3は摂れば摂るほどいいのか?
これは他のベースサプリと同じように、やはり適当(適度)が肝心です。具体的な数値をあげるとすれば、栄養保険として摂取するオメガ3量は 4g/日は越えないほうがいいと考えています。
ベースサプリにあるあるなのですが、のめばのむほど効果が高いと誤解している方もいらっしゃるので… あえて言及しておきます。
その理由は…
不整脈を誘発する可能性がゼロではない
かつて、心疾患のある人が大量のオメガ3を摂取すると心房細動という不整脈を(稀にですが)誘発するという報告がありました。ただこの件は2023年7月発表の大規模なメタアナリシス(論文※)で否定されたのですが…
ここからは私見ですが、大量のオメガ3を摂取すると不整脈になる可能性が全くないとは言い切れないと私自身は思っています。という理由で以前の論文の閾値も考慮して1日 4gを超えないのが安心かなと考えます。もちろん、そもそも 4gも摂取する必要もありませんが。
J Am Coll Cardiol. 2023;82:336-349
今回のレクチャーのまとめ
ということになると思います。
このレクチャーを機会にみなさんの理解が深まったなら、嬉しいです。みなさんの周りの人にも教えてあげてください。ぜひ健康度を高め、病気を予防し、老化を抑えていきましょう。
質問があれば遠慮なく!
ちなみに12/20(金)20時に、また質問会を開催します。